TAKAHIROさんスペシャルインタビュー

プロフィル
ダンサー、振付家。 世界的に有名なHIPHOPエンターテイメントコンテスト「NY APOLLO Theater TV Show」(Showtime at the APOLLO)にソロダンサーとして出場。史上最高記録となる9大会連続優勝を達成し、米国プロデビュー。振付家として欅坂46・日向坂46・櫻坂46、 Mrs. GREEN APPLE、藤井風、A.B.C-Z、ゆずなど、さまざまなアーティスト、ミュージカル作品の振付・演出、CM作品などを手掛ける。TBS「それSnowmanにやらせてください」、プロダンスリーグ「D.LEAGUE」ナビゲーターなど審査員・解説者としての出演も多数。また、大阪芸術大学客員准教授、DA東京学校長を務め、後進の育成に力を注ぐ。ダンサー事務所INFINITY主宰。
■Q1 ダンサーを志したきっかけを教えてください
何でもいいから、すごいと言われてみたいとずっと思っていました。学生時代、私は得意なことを持っていませんでした。
ある時、旅行先の街中のフードコートで、全身青塗りでサングラスをかけているパントマイミストと出会いました。その人はほとんど止まっていますが、時々動くのです。一瞬少し動いただけで、ドキドキしました。
また、テレビでブレイクダンスを見た時、ボールも楽器も持っていないのにこんなにすごいのかと。さらに、マイケルジャクソンのムーンウオークと出合い、僕は体一つで魔法みたいに人が動くことに感動することに気がつきました。そこから一気にダンスに夢中になりました。
■Q2 ダンスの専門知識を身に付けたいと思ったのはいつからですか?
2000年からダンスを始めて、2004年に渡米しました。渡米期間中にアメリカのアポロ・シアターで開催されたコンテスト「アマチュアナイト」で優勝し、プロの仕事が入ってくるようになってからです。
ダンスを習いたい気持ちは、ずっとありました。大学の廊下では練習している人がたくさんいました。背中でぐるぐる回っている人。手首を回している人。「どうやったらできるのですか」と自から学びに行きました。独学と局部的な学びのMIXで自分のスタイルが出来上がっていきました。 ダンスはきっと、それぞれのジャンルが線でつながって初めて形になるのですが、当時の僕は点だけを知りたかったです。文章を教えてもらうのではなく、「あ」とか「イ」の書き方を知りたかったです。そうすると漢字、カタカナ、ローマ字が混ざった文体、自分だけの世界ができあがります。それを持って、アメリカで一番歴史のあるエンターテイメント大会、アポロ・シアターの「アマチュアナイト」に出場しました。

■Q3 「アマチュアナイト」へ出場したきっかけを教えてください
大学卒業後、ダンスで就職する考えはありませんでした。でも就職活動の時、「夢は?特技は?」と聞かれ、すぐに返答できませんでした。ダンスはやってきたけれど、ダンスを夢だなんて言ってはいけない。でもチャレンジしたことがない。初めて自分が書き始めたダンスの物語の最終ページがないと思いました。
だったら最終ページは、ダイナミックなものがいいのではないか。将来おじいさんになった時に笑えるくらいの冒険がいい。世界一がいい。じゃあ大好きなダンスで、スターの登竜門で由緒あるコンテストを受けようと思いました。マイケルジャクソンもそこからスターになった歴史ある大会です。
■Q4 ダンサーの魅力・やりがいは
誰かがきっと喜んでくださると信じて、ものを作ったり動いたりできることです。やることがきっと、誰かのプラスになると思えること。きょうは、このダンスを見たから元気になったと誰かに思ってもらえると信じています。そしてダンスが好きなのです。
ダンスをすると知らないことがいっぱい学べます。世界を探検しているような気持ちになって、毎日が新しいです。100万ページある本を1ページずつめくる感じです。と何年続けても発見があります。わくわくがいっぱいです。
■Q5 夢はどうやったら見つけられるのでしょうか?
夢は、きっと外ではなく内にあります。夢は、きっと無理だよね。みんなに馬鹿にされるよね。それが夢だと思っています。
夢は大それたことです。世の中でいう夢、大人が言う夢は「あなたの実力をはかった上で、手に届く目標設定をしなさい」ということだと思います。でもそれは本当にやりたいこととは違うから、もやっとしてしまうのです。自分のコンプレックスが夢への近道だと思います。だから口に出せない。だって周りからは「そんなの無理」と言われてしまうから。夢に向かうことは、届かなさそうな雲をつかむような話です。
だから2通りの道があります。夢を追ってみるか。夢を追ってみないか。夢を追ってみようと思ったとき、行動が起きます。すると環境が変わります。環境が変わると行動がアップデートされます。そうしていくうちに、少しずつ近づいていくことができます。僕は当時、世界的なスターと一緒に働きたいと思っていましたが、あまりにも恥ずかしくて言えませんでした。でも今振り返ると、アメリカに行ったからできました。

■Q6 挫折をした時の乗り越え方についてアドバイスをください
挫折しそうになる時は、誰かと比べたときです。比べる時は、自分の心が弱っている時。だめかなと思った時に横を見ます。自分よりすごい所を探す大会が始まって、自分が劣っているところを見つけてしまいます。いろいろな人と比べていくと、良い物ばかり持っている人がいて。自分の存在価値がないのではないかと思ってしまいます。
でも人間は総合(トータル)でできています。
だからその時は思ってほしい。待てよと。どんな人でも自分を100%まねすることはできません。マイケルジャクソンでも自分というジャンルをまねしたら、自分の方が上手です。
■Q7 やりたいことを貫くために大切なことは
自分のことを誰か一人でも応援してくれる人を大切にしてほしいです。自分自身でもいいです。一人でも「いいじゃん」と思ってくれる人。その人がいいって言ってくれているのだから、その人にとって自分は価値があります。
「いいね」は数ではない、密度です。
挫折の乗り越え方は、まずは100人にとっての「いいね」よりも、一人でも素敵と言ってくれる人の言葉を大切にすることです。
そして、人は時代とともに変わります。だから本当に応援してくれる人をぜひ見つけてほしいです。まずそれが自分自身であってほしい。自分を一人だと思わないで。自分を応援する自分がいるといいと思います。
そして、見方を変えるのも良いですよ。素敵なアーティストさんの作品を作っていて、根詰めてしまうことがあります。その時、自分が素敵だと思う人の作品を作らせてもらっている。「もっとやってくれよ」とその人が期待してくれます。自分が作った作品が、いろいろな人に届くかも。そしたら「ありがとう」と言ってくれるかもしれない。すごいことだと見方を変えることで、苦難が浪漫に変わります。
■Q8 今後、挑戦したいこと
まずはもっと、新しいものを作りたいし、新しい表現がしたいです。そのための探求を続けたいです。
もう一つは、時が流れる限り、ダンスのページをめくっていきたい。ダンスの良さを皆様に伝える側になっていきたいです。自分を見てダンスを目標にしてくださる方もいます。ダンス業界を盛り上げる一員としての役割を責務として感じています。そうなった時に、ダンスという単語で、できる幅を広げることが自分の今のやりがいの一つでもあります。
今までダンサーと言えば、バックダンサー。アーティストとともにパフォーマンスをする人、あるいはダンススクールの先生というイメージだったと思います。
でも今は、YouTubeでダンスの魅力を伝えることもできるし、コンテストの審査だってできます。メディアにも出られて、ダンサーさんではなく、きちんと名前を呼んでもらえます。バラエティー番組に出られて、役者にもなれます。ダンサーは肉体を磨いている人がいっぱいいます。外から見られる仕事だから、経験を積めばモデルや俳優だってできます。ダンスの知識をもって、ラジオで話すこともできるのではないか。その前例を作るのが目標です。そうすれば、選ぶことができますよね。
ダンスが好きな人は1千万人を超えるといわれる時代です。その人たちが夢中になって突き詰めた先に座る椅子、行きつく場所をできるだけ広げていきたいです。
伝統も大事ですが、革新もわくわくするものですから大切です。変わらないものを大切にしながら、変わるもの、新しいことをどんどん開いていくことが私の夢です。